電気通信工事の給料はなぜ上がり続けているのか
「給料が上がるかどうかは、結局その会社しだい」——そう思っている方は多いのではないでしょうか。たしかに最終的に金額を決めるのは一つひとつの会社です。しかしいま建設・電気通信工事の世界では、賃金が上がりやすくなる方向へ、国の制度そのものが作り替えられています。公共工事の積算に使われる公共工事設計労務単価は、2026年3月から適用される分で全国全職種の加重平均が25,834円となり、2013年度の改定から14年連続の引き上げとなりました。なぜこうしたことが起きているのか、その仕組みを、制度の中身にさかのぼって正直にお伝えします。
労務単価は14年連続で上がり続けている
国土交通省は、毎年3月から適用する公共工事設計労務単価を改定しています。これは公共工事の予定価格を積算するときに使う、職種別・都道府県別の1日単価です。2026年3月適用分は全国全職種の加重平均で25,834円となり、初めて25,000円を超えました。前年度比は単純平均で4.5%の上昇、2012年度と比べると94.1%の増加です。この単価がそのまま個人の給与額になるわけではありません。あくまで工事費を積み上げるための基礎数値です。それが14年間上がり続けているという事実は、業界全体の値付けの土台が上がっていることを意味します。
「著しく安い見積り」が、法律で禁じられた
担い手を確保する法改正は2014年、2019年、2024年と三度行われ、このうち第三次・担い手3法による改正建設業法が2025年12月に全面施行されました。その中心が「労務費に関する基準」です。適正な労務費は、労務単価に歩掛(ぶがかり。作業1単位あたりに必要な手間の量)と施工量を掛けて算出する、という考え方です。そのうえで、これを著しく下回る見積りや、その値引きを求める変更依頼が禁じられ、原価を下回る契約は受注側にも禁じられました。基準は2025年12月に99工種(工事の種類の区分)で示され、2026年3月に34工種が追加されました。
CCUSが、技能を「記録」に変えている
CCUS(建設キャリアアップシステム)は、技能者の資格・就業日数・現場経験をカードに記録する、国が普及を進める仕組みです。2026年8月末で技能者の登録は191万人、就業履歴は2億8,900万件を超え、レベル1から4の技能判定は177,486件です。国はレベル別の年収の目安も示しています。2026年4月改定の全国の水準では、レベル1は標準値が395万円、目標値が535万円以上、レベル4は標準値が572万円、目標値が754万円以上です。法的拘束力はありません。ただ、技能の評価を気合いや口約束に委ねず、記録に載せ替える流れが進んでいます。
長く働くことではなく、時間あたりの価値で評価される
建設業に時間外労働の上限規制が入ったのは2024年4月です。厚生労働省の統計では、月間総実労働時間は2023年度の163.4時間から2025年度の159.8時間へ減りました。年換算で比べた全産業平均との差も、パートを除く集計で62時間から43時間へ縮まりました。一方、働き手は増えていません。同省が電気工事従事者として集計する区分の有効求人倍率は、2026年7月時点で3.26倍と、全職業計の1.05倍を上回ります。残業で収入をつくる形が成り立たない以上、同じ時間でより価値の高い仕事をし、単価と処遇に反映することが企業に残された道です。
制度が変わった、この局面で始める意味
正直に言えば、制度が整っても、すべての会社ですぐ賃金が上がるわけではありません。施行前の2025年秋の国の調査では、直近の1現場で労務費を内訳明示した見積書を出した下請は、公共工事で約6割、民間工事で約5割にとどまっていました。行き渡るには時間がかかります。それでも、制度そのものが賃金の上がる方向へ変わったこの局面で技術を身につけ始める意味は大きいと、私たちは考えています。
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